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学習性無力感についての話

ちょっと頭の中に思い描いてみてください。

あなたは、今、小さな象の子どもになっています。

ぱおーんと鳴く、鼻の長い、あの象です。

そして、今、サーカスにいます。

(漫画やアニメのイメージで構いません。私も、実際には見たことなんてないので。😅)

あなたは、鎖につながれています。

サーカス団のために芸をして、お金を稼ぐために飼われているからです。

目の前には、ひげを生やしてシルクハットをかぶった、おなかの出ている中年のおじさんが立っています。

手にはムチを持っていて、すごく怒っています。

お酒も飲んでいるようです。

そして、あなたに向かってムチを振り下ろしながら怒鳴ります。

「今日のあの芸はなんだ?あんなものでお金がもらえると思っているのか!?」

「誰が食わせてやってると思っているんだ!?」

「お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ!?」

「まともに芸もできないなら、肉屋にでも売り飛ばしてやろうか!?」

今夜も、何度も何度も、ムチでぶたれます。怒鳴られます。

痛い。苦しい。逃げたい。

必死で鎖を引っ張りますが、子どもの力ではどうすることもできません。

そんな生活が、もう半年ほど続いています。

痛い。苦しい。逃げたい。

5か月前も、そう思って鎖を引っ張りましたが鎖は切れませんでした。

痛い。苦しい。逃げたい。

3か月前も、そう思って鎖を引っ張りましたが鎖は切れませんでした。

痛い。苦しい。逃げたい。

痛い。苦しい。逃げたい。

今は、もう、鎖を引っ張ってみようとする気力さえ残っていません。

それから、5年が経ちました。

あなたは、もう、人間の何倍もの大きさのある、大人の象になりました。

芸もうまくなり、おじさんにむちでぶたれる回数も一週間に一回くらいになりました。

大人になって、皮膚も頑丈になってきたのか、ムチでぶたれてもそこまで痛くありません。

今でも、夜は鎖につながれていますが、以前ほど苦しい生活ではなくなっていました。

そんなある日、サーカスに新しい象がやってきました。

まだちいさな、子どもの象です。

以前の自分と同じように、昼は芸の訓練、夜は毎日怒鳴られ、ムチでぶたれる生活をしているようでした。

そして、後輩象は、自分と同じように、毎日、逃げたい逃げたいと必死に鎖を引っ張っています。

あなたはそれを見て、苦い記憶を思い出しながら、「その鎖は、切れないんだよ。ぼくもどれだけ頑張ってもダメだったんだ。でも、芸さえおぼえれば、ここでの生活も悪くないよ。」と、心の中で思います。

なぜ本人に言わないのかって?

あなたと後輩は、サーカス小屋の端っこと、もう反対側の端っこに鎖でつながれているので、声が届かないのです。

大声を出そうものなら、すぐにムチを持ったあのおじさんが飛んでくることでしょう。

今日も、子象は涙を流しながら、鎖を引っ張っているようです。

あなたも、今日も、少しだけちくちくする思いで、その様子を眺めていました。

「自分が、鎖を引っ張るのをやめたのは、いつだったかなあ。」

小象は必死で鎖を引っ張りますが、今日も、鎖はちぎれません。

ところが、その日は、雨で地面がぬかるんでいたせいか、鎖が地面の根元から、すっぽりと抜けてしまったのです。

あれだけ、あれだけ、頑張って引っ張ってもちぎれなかった鎖が、自分の半分にもならない、子どもの力で抜けてしまいました。

後輩君は大喜びでしばらく走り回ったあと、どこかへ逃げて行ってしまいました。

残されたあなたは、長い間、ぼうぜんとしていました。

ぶたれた痛さ、おじさんの怒鳴り声、頑張ってもダメだったくやしさ、おびえながら目を閉じた夜、そのまま寝不足で迎えた朝、色々なことが頭の中でぐるぐる回ります。

どれだけ時間がたったのか。もしかしたら、ほんの数秒の回想だったのかも知れません。

あなたは、ふと、立ち上がって、鎖に力を込めてみました。

本当に、ちょっとだけ。

軽く、軽ーく、おそるおそる、引っ張ってみました。

鎖は

抜けました。

あっさりと。

あなたは、どうしますか?

これから、何をしましょうか?

私だったら、う~ん、誰もいない原っぱで、適当に一週間ほどごろごろしたいですね。

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